公衆衛生看護の思考を深める対話法

研究の概要
先行き不透明な現代社会において、保健師には、未経験の課題、解を一つとできない課題に対応していく力が、より一層求められます。そのような力をつけるには、場と時間を共有した直接的な対話を通して、深く考える力、すなわち批判的思考や内省的思考を養うことが重要です。批判的思考や内省的思考は、自身の認知を異なる次元から俯瞰する認知である、メタ認知を働かせることが鍵となります。

私たちはこれまでに、保健師活動の状況と事例を使った公衆衛生看護の演習教材を開発しました。教材で用いている保健師が遭遇する状況や事例は、それがリアルであればあるほど、どのようにアセスメントするか、どのようにアプローチするか、答えは一つでなく無数に考えられます。そこでは、公衆衛生看護を学ぶため、深めるために、状況と事例を介して多様な対話が生まれます。その対話をとおして、対話に参加する人たちが、自分自身の保健師としての思考、公衆衛生看護の思考を深めることにつながると考えました。
対話に参加する人たちとは、基礎教育の現場においては、教員と学生、教員同士、実践現場においては、新任保健師と指導者、先輩と後輩、上司と部下などが考えられます。
 
「正解のない問題に取り組むためのメタ認知に着目し公衆衛生看護の思考を深める対話法」研究では、状況と事例を使った演習指導場面で、またはリアルな状況で学ぶ実習指導場面で、学生の反応を契機にどのように対話で深めるかを議論してきました。
教員が指導に迷う場面を取り上げ、自分がその立場なら、何が頭に浮かび,どのように返すか、ともに地域/公衆衛生看護の教育に携わる教員同士で議論しました。その議論では、学生の反応についての解釈や学生への対応も多様で、教員なりの意図があり、唯一の最もよい答えを決めることはできませんでした。

しかしこの議論を通し、地域/公衆衛生看護の思考を深める対話の本質とは何かを考えることができる、そして参加する教員が自らの指導のあり方を振り返ることにつながることがみえてきました。
私たちは、ありがちな教育・指導場面を活用し、公衆衛生看護の思考を深める対話の本質を、これを読んでくださる皆様との対話を通して、さらに探究していきたいと考えています。 

これまで議論した内容とその振り返り・考察はnoteの記事で順次紹介しています。
ご覧いただき、皆様からのさらなるフィードバックを歓迎します。

対話で深める地域/公衆衛生看護
この研究に関する成果報告はこちら
公衆衛生看護の思考を深める対話法ワークショップ(2023.12.8 @山口大学)報告
大学間連携による地域看護学教育ファカルティディベロップメント戦略会議(通称:地域看護学教育FD会議)を山口大学で開催しました。この会議は、国内の看護系大学で地域看護学教育に携わる教員有志により約20年継続しているもので、教育に関わる最新の動向や互いの教育研究実践の共有を図り、メンバーの自己研鑽と大学における地域/公衆衛生看護学教育の向上を目指しています。今回は山口大学で開催することとなり、本ワークショップをプログラムの一部として開催しました。7大学12名の教員が参加しました。
今回は、「保健所実習最終日のカンファレンスで学生が発表した内容に対し、指導保健師が戸惑う状況」に同席した教員という設定で、ワークを行いました。活発な意見交換の後、研究メンバーの沖林先生による「メタ認知と対話」というテーマのミニレクチャーを受講しました。沖林先生からはメタ認知や対話、問いに関わる理論やモデルを紹介いただきました。対話とメタ認知に関して、「フレーム問題」「課題の定義」「バイアス」という考慮すべき視点について提示していただきました。
参加者とは会終了後、山口の美味をご一緒しました。ここでも、教育あるあるについて議論が弾みました。
日本地域看護学会第25回学術集会ワークショップ(2023.9.2)報告
ワークショップはハイブリッドで開催し、会場参加33人(大学教員29、保健師など4)、オンライン参加19人、計52人でした。
「実習指導において思考を深める問いとはどのようなものか」というテーマで、公衆衛生看護の思考を深める対話法について検討しました。実習指導で教員がよく経験する、学生の反応に少し戸惑いを覚える場面をとりあげ、グループに分かれて、そのような時学生にどのような言葉をかけるか? なぜそのような言葉をかけようと思うのか?を話し合いました。
グループワークの全体共有の後、「メタ認知と対話学習」について情報提供しました。実習や演習では、保健師が実践の対象とする「地域」「事例」を取り扱います。「地域」「事例」は無数の変数を含んでおりただ一つの正解というものは存在しません。それを教材にした時学生とどのような対話をしているか、振り返る機会となることを意図しました。
グループワークでは、経験豊かな教員や保健師から様々な関わりや考えが報告され、共有されました。「学生への自分のかかわりを振り返る機会になった」「新米教員にとってこのような機会が大変貴重であった」「実習や演習指導の各場面の教育意図を明確化しておく重要性に気づいた」「質問が学生を委縮させる可能性に気づいた」「大変有用な機会であったが、メタ認知の方法を深めるにはもう少し段階的議論が必要ではないか」など、このような形態のワークに対する貴重な意見を多くいただきました。
このワークショップは学術集会終了後一定期間オンデマンド配信されました。オンデマンド視聴者から大変有用な内容であったというコメントも寄せられました。
 
これまでの研究の経過
「正解のない問題」に取り組むメタ認知に着目し公衆衛生看護の思考を深める対話法
 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2022年4月 - 2025年3月
看護学士課程における「コミュニティに焦点を当てた看護」教授―学習モデルの開発
 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2016年4月 - 2019年3月
保健師基礎教育における地域看護診断の演習・実習で用いる評価ツールの開発
 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2012年4月 - 2015年3月
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